岡山県立大学保健福祉学部
現代福祉学科
村社 卓 研究室

最新著書の紹介

村社 卓著『たのしくつながる高齢者の孤立予防モデル-参加とサービス利用を促す関係づくり-』(川島書店、2020)209頁

 著者は、2013年から約6年の間、高齢者の孤立予防について大都市を中心に調査を行いました。本書はその成果をまとめたものです。
 本書が出版された2020年の冬も、今日と同様、特に大都市では、参与観察も対面でのインタビューも、実施が困難でした。新型コロナウイルスの世界的な蔓延のなかで、対面的な調査を前提とする定性的(質的)研究は今後どうなるのだろう?本書はそのような不安のなかでまとめられました。
 著書名は「たのしくつながる高齢者の孤立予防モデル」です。副題は「参加とサービス利用を促す関係づくり」です。なぜこのタイトルなのか?それは、たのしいこととつなぐことは、高齢者の孤立予防を実現する推進力だからです。高齢者の孤立予防活動を行ううえで、たのしくないと、対象者だけでなくボランティアも参加してくれません。参加しても継続は困難です。そして、必要に応じて福祉サービスの利用につないでもらえるシステムは、多くの人にとって魅力的です。本書では、このことを大都市における高齢者の孤立予防を目的としたコミュニティカフェの実践分析を通してモデル化しました。
 高齢者がたのしくつながるには、参加とサービス利用を促す関係づくりが前提となります。関係づくりには、「支援者」だけでなく媒介機能を担う「媒介者」とその「協力者」が必要です。このコミュニティカフェの活動には、ボランティアなど多くの地域住民が、主に「協力者」として参加しているのです。
 本書は、著者にとって、ソーシャルワーク研究における原点回帰となるものでした。なぜなら、上記のように「媒介者」および第三者としての「協力者」の役割に注目しているからです。このように、本書は「介護予防・日常生活支援」の展開が期待されるこんにち、ソーシャルワーク実践において、改めて「媒介者」および「協力者」への注目とその積極的な活用を提案するものです。
 加えて、本書では定性的(質的)データ分析の手順についても、実例を用いて具体的に説明しています。これまで、定性的研究の領域において、コーディングの方法を具体的に提示した書籍はほとんどありませんでした。そして、このコーディング作業を、著者自らの経験を通して記述しているところに本書の特徴があります。ぜひ本書を、定性的コーディングのガイドラインとしても活用してください。

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